
仮装による離婚
仮装離婚とは,夫婦間で離婚する意思などないのに,役所に離婚届を提出して離婚することをいいます。
どうしてそんなことをするかというと,例えば,借金逃れのためであるとか,氏を結婚前のものに変えたいなど,様々な理由があります。
本当は離婚する意思がないため,離婚は無効になるのではないか,という疑問が生じます。
この点について,最高裁昭和38年11月28日判決は,ちょっと時代背景が古いのですが,妻を戸主とする入夫婚姻をした夫婦が,事実上の婚姻関係は維持しつつ,単に,夫に戸主の地位を与えるための方便として,協議離婚の届け出をしたという事案において次のように述べ,協議離婚を有効としています。
「上告人及びその妻●●は判示方便のため離婚の届出をしたが、右は両者が法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づいてなしたものであり、このような場合、両者の間に離婚の意思がないとは言い得ないから、本件協議離婚を所論理由を以つて無効となすべからざることは当然である。」
また,詐欺的に仮想離婚をそそのかされてしまったような場合,つまり,夫が,離婚する気のない妻に対して,借金逃れのために戸籍上離婚しようと持ち掛けて離婚した場合に,妻側は後からだまされたといって離婚を取り消すことができるかという問題がありますが,難しいと思います。
離婚する気がないのであれば,離婚届に署名・押印をしてはいけません。
離婚相談弁護士横浜 細江智洋